-Vermillion-

両親は一年前から海外に駐在していて、

今はこの一軒家に

兄の真朱と二人で暮らしている。

 
加奈は中学の始めに、

隣の赤峰市から転校して来て以来、

大親友で、近所に住んでいるけど、

我が家の合鍵置き場を知っているから、

毎日の如く勝手に入って来るのだ。


ソファーに座りながら

テレビドラマを見ていると、

加奈が口を開いた。


「真朱って本当、かっこいいよねぇ。」

「そうかな…?」

「そうだよ!超級の美男子だよ?
 本当、贅沢な妹だねー。」


私には理解出来ないけど、

加奈曰くそうらしい。

「超級の美男子…」


暖かい陽の光の心地よさが、

深い眠りへと誘っていく……

私はゆっくりと目を閉じた。


夢うつつに、

大きな掌が私の頬に優しく触れた。

「朱乃。起きろ、朱乃。」


目を覚ますと、

コートを着たままの真朱が

少し呆れ顔で覗き込んでいる。

「おかえり…加奈は…?」

「あぁ、いない。
 帰ったんじゃないか?
 それより、晩飯は?」

私は首を振った。

言われてみれば、お腹がぺこぺこだ。

「何か作るよ。何がいい?」


(五丁目に新しくオープンした、
 お洒落なイタリアンの店を紹介!)


「明日からはちゃんと学校行けよ?」

「うん…」

「目の事で何かあったら、俺に言え?」

「うん…」


沈黙。そして、テレビの音。


「真朱のご飯、美味しい…」

「そう?いくらでも作ってやるから。」

「明日は、オムライス…」

「はいよ。」


その時、テレビの声が割り込んで来た。

(うん!とっても美味しいです!
 トマトソースがパスタによく絡む!)


「パスタもいいな…」

「ふっ……はいはい。」

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