-Vermillion-
「え…何?」
動揺する真朱の手を引いて、テーブルの前まで誘導する。
加奈が冷蔵庫から出したケーキに刺さった十九本の蝋燭に、
爽が火を点ける。時は十二時を迎えようとしていた。
♪Happy Birthday To You、
Happy Birthday To You、
Happy Birthday Dear 真朱♪
「HAPPY BIRTHDAY TO YOU !!!」
「お誕生日、おめでとう…」
「おぉ、ありがとう!消す前に願い事だよな?そうだな……」
真朱は深く目を閉じて、祈る様にそっと吹いて火を消した。
この時を待っていたかの様に、雨が止んだのを見計らって、
私達は庭で花火をした。
とはいっても去年買い溜めした線香花火の残りだ。
その量は少なく、それが故にとても貴重な物に思えた。
激しくも儚いその光に、皆はどんな願いを込めたのだろうか――
線香花火が切れた途端に、また霧雨が降り出した。
雨が止んでいたその時間はまるで、
私達が花火を見つけた事を知った神様から
真朱への誕生日プレゼントみたいだった。