-Vermillion-

-MAI 1 (Mar)-
 はしゃぎ疲れてそのまま寝たのか、目が覚めたらソファーにいた。
 時計を見ると午前十時。
 体を起こすと、テーブルで本を読んでいた真朱と目が合った。

「真朱お早う…二人は…?」
「おはよ。朝早くに帰ったよ。」
「そうなんだ…」
「それよりさ、今日一日俺に付き合ってくれない?」
「いいけど…急にどうしたの…?」
「今日は、誕生日だから。」

<誕生日の人は、その日一日王様になれる>

 昔、真朱とそんな決まりを作った。
 私は王様の願いを叶えるべく、
 真朱と電車でセンターの東外れにある「ハッピーランド」に向かった。

 名前の由来は余山の南西に海、北東に山がある事。
 海の幸山の幸、幸あふれる余山市の、ハッピーランド。
 ちなみに名付け親は、市長である爽のお父さんだ。

 GW中とはいえ、雨の遊園地は比較的空いていた。
 絶叫系アトラクションの幾つかは、雨の為運行停止となっている。
 
「週末は晴れるのに…」
「いいよ。俺、あれに乗りたかっただけだから。」

 そう言って真朱が指したのは、
 海と山が一望出来るのが売りの観覧車だった。
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