-Vermillion-
―――
 俺は運転をしながら内心冷や冷やしていた。
 まさか、この子だったとは……

 丁度一週間前、俺は調査の為リストに載っていた人物に会っていた。
 その日最後に会いに行ったのが、余山四丁目に住む小林遥だったのだ。
 リストの備考に丸印が付いていたっけ。

 それにしても気づかれなくて良かった。
 あの日は裸眼で会ったから、瞳の色に気を取られたのかもしれない。
―――

 雨の中二時間半程車を走らせると、前方に雲の切れた晴れ空が見えてきた。
 目的地を目の前に皆のテンションがぐっと上がり、
 車内は即席カラオケと化していた。

 運転続きの真朱の休憩も兼ねて、車を止めて遥の作ったお弁当を食べる。
「おぉ何だこれ!うめぇじゃん!」
「料理なんかするんだね!以外。」
「美味しい…遥、料理上手…」
 真朱は何も言わずに黙々と食べていた。また考え事をしている様だ。

 旅館に着くと早速ボールを脹らまして、
 浜辺にネットを張りビーチバレーをした。
 西海岸はとても良く晴れていて、Tシャツとスウェットで丁度良かった。
「太陽だ、海だ、ビーチバレーだ!」

 爽が大はしゃぎしている。
 スポーツが得意な加奈はいつも以上に張り切っていた。
「谷村、真朱とあたしに互角で張り合う自信あんの?」

 両チーム一歩も譲らない競い合いに、
 引き分けの時点で真朱が終了を告げると、
 シートに座って皆でサイダーを飲んだ。
 五月とはいえ、サーファー達で海岸は賑わっている。

「太陽拝めるっていいな。」
 爽の言葉に誰も返事をしなかったけど、
 皆その一言を噛みしめる様に空を見上げた。
 雲はとても高く、 空は透き通る様に澄んでいる。
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