-Vermillion-
 真朱はいつも人から好かれた。女子からも、男子からも、先生からも……

 幼稚園の幼馴染で美月という女の子がいた。
 爽と真朱と美月と私、仲良し四人組だ。

 小学校五年の時に赤峰市に転校しても、
 その子は真朱と一年程文通していた。
 その内容が愛の言葉で埋め尽くされる様になってから、
 真朱は手紙を出さなくなった。

 優しくて、格好良くて、頭のいい、頼れる男の子――
 そんな完璧な偶像が、真朱だ。

 憧れ、恋い焦がれ、時として狂わせる……愛とは何て歪んだ物だろう。

 ふと足音がして、驚いてそちらを見ると爽だった。
 私の隣まで来て、静かに胡坐をかく。

「水野、真面目な話があんだけどさ……何も言わないで聞いてくれ。」
「うん、分かった…どうしたの…?」
「本当は絶対言わねぇって思ったけど、やっぱ後悔しそうだから。
 幼稚園の時から俺、水野の事好きだったんだ。」

「…。」
「でも俺じゃ駄目だって事も分かってた。
 どうしても真朱兄には到底敵わねぇから!
 笑っちゃうだろ?一時期は本気で張り合おうと思ったんだぜ?」

「爽…」
「言うな。何も言うな……お前が何を言いてぇかも分かるし、
 それが言葉にならない事だって分かってるから。
 ただ、これだけは言っておく。」

 爽は立ち止まると、私を強く抱きしめた。
 鼓動が伝わって来る……胸が痛い。

「俺はずっとお前の味方だから。
 俺はお前の傍を、絶対離れたりしねぇから……」

 零れ落ちた涙が、私の肩に落ちる。
 私はそれをそっと拭うと、爽の頬を撫でた。

「ありがとう。爽、ありがとう…」
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