-Vermillion-
-MAI 5 (Sam)-
 ピピピ、ピピピ、ピ。
「ん…もしもし…?」
‐水野?俺、俺。今日パトロール行かねぇ?西山は来ないけど。

 爽の電話で目を覚ますと、眠たい目を擦ってリビングに顔を出す。
 ママは出かけていて、真朱はバイトの様だ。
 テーブルの上の置手紙を手に取る。

<冷蔵庫に昨日のシチューがあるから、温めて食べてな。 真朱>

 昼ご飯を食べてから、待ち合わせ場所に向かった。
 ファーストフード店の窓際の席に、
 爽と向かいに座る遥を見つけて、駆け寄った。

「あ、朱乃!さっきそこを通って爽を見つけて、話し掛けたの!」
「おう。で、この前の話してたんだ。」
「この前の話…?」
「うちのせいで加奈が、何か恐がってるって聞いて……」
「まぁ、結城のせいとは言わねぇけど。」
「遥は…本当に、あの時、加奈も危ない、って思ったの…?」

 遥は困った様に眉間に皺を寄せると、申し訳なさそうに笑った。
「実は少しね。そう思っちゃった。」

 その後三人で二丁目をパトロールした。
 何も言わずに、いや、何も言えずに。
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