-Vermillion-
―――
 俺はバイトが終わると、大急ぎで家に帰る。
 朝起きた時、母さんはもういなかった。
 いつ家に戻って朱乃と二人きりになり、何を吹き込むか分からない。

 慌てて玄関のドアを開けると、キッチンから物音がした。
 マズイ、もう帰ったのか。

「ただいま。母さん、帰ったのか?」
 俺は靴を揃えながら、さり気無くリビングの様子を伺う。
 朱乃がいる気配は、ない。

「おかえりなさい。
 何だかほっとした顔しているけど、いい事でもあったの?」
「あぁ、そう、そんな所かな。」
「それは良かったわね。
 ジャムサンドを作ったから、お紅茶とどうぞ。」

「で、昨日の話の続きだけど……」
「昨日の話?どこまで話したっけ?」

「WNO、魔犬、それからその主人……
 最近朱乃が連れてる蝶の事が聞きたい。」

「あの蝶ね……どうかしたの?」
「恍けんなよ。あんたらが送り込んだんだろ。」

「残念ながら、それは違うわ。あの地獄蝶と呼ばれる蝶々は、
 魔界が送り込んだもので、WNOの管轄外なの。」
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