-Vermillion-
 沢山の料理で埋め尽くされた食卓、家族の賑やかな笑い声、テレビの音。
 誰もが憧れる幸せな一時がそこにあったというのに、私は何だか疲れた。
 二人は何かを隠してる、そう思った。
 理由は分からないけど、ただそう思ったのだ。

 寝転がって窓の外に目を向けると、
 昼間掛かっていた雲が晴れて、綺麗な月が出ていた。

「うさぎの餅つき…」
‐どうなさったのですか、主様。
「日本ではね、月の模様を、そう見立てるの…」
‐面白いですね。言われてみれば、確かにそう見えるかもしれません。
「美影にも、月が見えるのね…どんな色をしてるの…?」
‐白色と黒色、でしょうか。

 深い夜空の色と、金色に輝く月。
 それらが白黒に見える美影の世界は、どれほど殺風景な物なんだろう……

「美影は、寂しくないの…?」
‐全くございませんよ、主様…

 そう言い切った美影の声は、とても切なくて、とても寂しそうだった。

「誰もが皆、誰かと繋がっている様で、きっと一人なんだよ…」

 美影の存在はいつの間にか、心安らぐ場所となっていた。
 私も美影の力になりたい。


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