-Vermillion-

-MAI 6 (Dim)-
 小鳥の囀りで目を覚ました。時計は、午後十二時を指している。
 GWは、こんなにも長い休みだっただろうか。
 リビングのテーブルには、真朱の書置きがあった。
 ママはまた何処かへ出かけている。

<朱乃へ:
 今日は友達と遊びに行くから、帰りは遅くなる。 真朱>

 私は着替えると、近所である二丁目のパトロールに出かけた。
 一昨日から加奈と連絡を取っていない。
 きっと向こうも、誘いにくいと思う。
 加奈の代わりと言っては何だけど、
 遥がパトロールに参加する事になった。

「お待たせ!大通りが混んでて……」
「GW最終日だもんな!じゃ行こっか!」

 一向は私と爽の母校、
 余山第二小学校付近で扉を見つけると、後について行く事にした。
 扉は遥の言った通り、時間が経つとふっと消えて、
 少し離れた別の場所にまた姿を現す。
 きっと今までもそうして、市内を移動していたのだ。

「前に水野が見た魔犬は、ここから出てくんのか?」
「そこまでは知らないよ。うちはその魔犬を見た事ないし……」
「でも扉は俺には見えない。狗も見えなかったらどうしよっかな。」
「何で…?私達だけじゃ不安?」
「何で?って……それじゃお前らを守れねぇだろ。」

 爽はそれが当たり前である様にさらっと言った。
 優しくて逞しい、男らしい男の子。
 東高や他校の女子からも、結構人気がある。
 そんな彼に私は、今までどんな思いをさせていたんだろう?
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