-Vermillion-
#07「The Tower」正位置 – 崩壊
-MAI 8 (Mar)-
白と黒で埋め尽くされた部屋。
百合の香り、黒い服を着た人々、そして泣き声。
淡々と読み続けられる経を聞きながら、
私は真朱の隣でひたすら俯いていた。
膝の上で握りしめた拳が凄く痛い。
爪が掌に食い込んだのかもしれない。
前に座っている爽と遥の背中が震えている。
真朱は今、どんな顔をしているだろう。
あの時夕食を食べなければ、 のんびり散歩しなければ、
もっと早く走っていれば……
彼女は今でも笑って過ごせたかもしれない。
あの時、私達が――
-MAI 6 (Dim)-
―――
大学の友達から誘われて、俺はセンターに出ていた。
久しぶりに大勢で遊ぶ。
頭の中で渦巻く何かを押しのける様に、無理やり笑顔を作った。
朱乃との別れが近づいている……
おまけに朱乃が辿る運命は、決して笑って送り出せる様な幸せな物ではない。
俺が代わりになる事すら出来ない。俺は……
「おい真朱!次お前の曲だぜ?」
「あ?あぁ、サンキュ。」
俺はマイクを受け取ると、画面に目を向けた。
朱乃が大好きな曲だ。
あぁ、駄目だ。
やっぱり今日帰って、朱乃にちゃんと言おう。説明しよう。
でなきゃ……
―――