-Vermillion-
「無念」――そう、私達は無念だった。
目の前で加奈を死なせてしまった事。
私がこの手で守ろうとした物は、一体何だったのだろう。

それから三十分後、警察の人が迎えに来て、
私達は休む間もなく事情聴取を受けた。
短髪で眉間に皺を寄せた、
角ばった輪郭の若い刑事が、困った顔で私を見ている。

「扉、狗、またそれか。 君達四人の内、
三人は同じ証言をしているけど、一人だけ見てないと言っているんだ。
それはどうしてかな?同じ場所にいたんだよね?」
「分かりません…だけど私は、嘘は言っていません…」

―――
「連続殺人の現場には、確かに毎回大きな足跡があった。
だけど突然途切れているんだ。まるで何もない所から現れて、
そのまま消えた様に。どうしてだと思う?」

「だから、その犯人は魔犬だから。」
「そんな物はいないよ。犯人が使ったトリックを君達は見たと思うんだ。」

「見た物をその通りに言った。
信じないなら、それ以上聞く事に意味があるのか?」

警察に捕まえられる相手じゃない。こんな事情聴取に、何の意味がある?
相手はWNOでも魔界でもコントロール出来ない、イかれた魔物なんだぞ。

俺は俯いた。
どうかしてるよ……俺も、この現実も。
―――

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