-Vermillion-
急に目の前が真っ暗になった。そうか。私は今、夢を見ているんだ。

~漆黒の闇の中一筋の光が照らしている。
 その光の先で黒いアゲハ蝶が、道案内をするかの様に舞う。
 そのまま蝶について行くと、ぱっと視界が明るくなった。
 そこに広がっていたのは、白い薔薇の咲き乱れた、黒い世界。
どうやら公園の様だ。

‐主様、主様。

声のした方を見ると、朱い瞳の真朱が歩いて来る。

「真…朱…?どうして…?」
‐主様、私です。美影でございます。
「美影本当は、真朱にそっくりなの?」
‐これは仮の姿。元々私に形などありませんから。
「空気みたい…でもどうして、真朱の姿なの…?」
‐主様が心から愛するお方のお姿でいた方が、慰める事が出来るかと。

私の心から愛する人が真朱……間違ってはいないかもしれない。
けれど、実の兄だ――
そんな禁忌を冒してまで、真朱と結ばれようとは思わない。

美影は私の手を取り、座るように促して自分も隣に座った。
「私のせいなの…巻き込んで、守れなくて、失った…」

美影は強く私を抱きしめた。その想いのせいか、苦しくて仕方ない。
「美影、苦しい…」
‐……申し訳、ありません。

美影はそっと私を放すと、手を伸ばして頬に触れた。
指先で優しく涙を拭う。
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