-Vermillion-
#08「Judgment」逆位置 - 後悔
-MAI 8 (Mar)-
式が終わり、皆で出されたバイキング形式の夕食を食べた。
すっかり冷めきった料理は味が薄くて、決して美味しいとは言えなかった。
だけど、それが今の気分にぴったりな気がした。
温かい物を食べても、暖まれはしないのだから。
「朱乃ちゃんも爽君も、加奈と仲良くしてくれてありがとうね……」
おばさんは止めどなく流れ続ける涙を拭おうともしなかった。
「あんた達に看取って貰えたんだから、加奈も幸せ者だね……」
違う、それは多分ーー
思わず真朱の方を向いた時、私は生まれて初めて真朱の涙を見た。
ーーー
旅行先での最後の夜、加奈が海岸で流した涙は、俺が流させたものだ。
加奈をそれを自分の袖ね拭った。
本当なら俺が、拭ってやるべきだったっていうのに。
俺はどれ程長い間、加奈に辛い想いをさせてきただろう?
朱乃の親友でありながら俺を好きになって、馬鹿な奴だ。
そして俺は、最低な奴だ……
***
バイクを公園の前に乗り捨てると、持てる全ての力で駆け出した。
確か叫び声は公園の奥から聞こえた。何処だ、何処にいる?
少し走ると、倒れてる男を見つけた。
血塗れではあるけど、既に乾いた物の様だ。
「おい、しっかりしろ!待て、あんた、息が……まさか……」
手前側の茂みがざわついた。何かが奥の方へ走る音がする。
俺は男をそのまま寝かせると、その物音を追った。
茂みが開けた所に黒い大きな狗がいた。何かを運ぼうとしている。
俺は手近にあった大きな石を拾うと、狗に向かって投げつけた。
鈍い音の後、狗は怯んで後ずさると、さらに奥の方へ逃げて行った。
さっき狗がいた場所に女が倒れている。
出血は酷いけど、まだ動けるみたいだ。