-Vermillion-
お通夜が終わると、片付けを手伝ってからおじさんの車で家に帰った。
ママは部屋にこもって何かに没頭している。
私は無言で自分の部屋に戻って、そのまま布団に飛び込んだ。
服に塩が残っていて気持ち悪い。それでも私はそのまま目を閉じた。
〜白い薔薇の咲き乱れた黒い世界で、
真朱の姿をした美影が、此方に歩み寄って来る。
美影は私の手にそっと触れると、傍にあったベンチに座らせた。
-主様……私は貴女にもう一つ、隠し事をしていました。
「どうしてそんな、悲しそうな顔をするの…?」
-あの時、此処で貴女に言えなかった事を覚えていますか?
「その時が来たら、言ってくれるって言った…?」
-『その時』は多分、もっと前であったと、今は思っています。
聞いて頂けますか?
「うん…話して…」
-この世界を魔界を繋ぐ扉の門番を務めながらパトロールを熟す魔犬は、
魔界警察と呼ばれていますが、手綱を捌く者がいないと、
血を求め狂気に犯されるただの魔物でしかありません。
その手綱を捌けるのは今、貴女しかいないのです。
Vermillionと名付けられた魔犬の主人候補者は朱い瞳を持つ人間ですが、
次の最も有力な候補者が、主様、貴女なのです。
「だからあの時、狗は帰って……真朱が追い払っても、駄目だった…」
-魔犬を従えるには、主人の血液を適度に飲ませる必要があります。
現在の主人は体が弱り、もう長いこと血液を与えていません。
それが今回の事件、魔犬が暴走した本当の原因なのです。
そして私が送られてきたもう一つの理由です。
「向こうに行ったら、私は…どうなるの…?」
-二度とこの世界に戻ることはできません。
皆様にもお会いすることはないでしょう。
それでも、私と一緒に行って頂けますか?