-Vermillion-
心の中でありとあらゆる感情が渦巻いて、形にならないまま回り続ける。
声にならない葛藤と共に、無性に何かが渇く。俺は、朱乃を助けたい……
きっと叫びたい位に、その真実を表しているんだろう。
「真朱、その傷……どうしたの?」
母さんに言われて右手を見下ろした。
知らぬ間に手の甲から大袈裟に血が垂れている。
多分さっき紙で切ったんだろう。
そう思いながら、俺はただその朱いものを見つめた。
母さんは何も言わずにドアをそっと閉めた。
それ程に俺の情けない姿が見るに耐えなかったんだろう。
夕方、爽と遥を呼び出して、朱乃の手紙を渡した。
二人は震える手で手紙を開き、信じられないという様に目を見開いた。
俺は声を上げて泣いている二人から目を逸らして天井を見上げながら、
どうして立て続けにこんな悲しい想いをしないといけないんだろうか、
と考えた。
何か報いを受ける様な事をしただろうか。
善悪の分別が付かない程小さい頃にした悪事、行き過ぎた冗談……
その裏側で誰がどんな想いをしたか、考えたらきりがない。
人間とはそういう生き物だ。
常に誰かに迷惑をかけて、その犠牲に上に成り立っている。
今となっては全てを償う方法など、もはや存在しない。
それでももし償う事が出来るとしたら、俺は迷わずそうするだろう。
朱乃と同じように。