桜‐幕末恋物語‐
「私、この時代の人間じゃないみたいです」
「「「は?」」」
私の言葉に3人は呆けた顔をしたかと思えば、土方さんは刀を抜いた。
的確に首の横に運ばれた刃。
普通の人だったら命乞いするのだろうけど、私はそんなことする気はない。
だって、死んだって構わないもの。
「お前、この期に及んでふざけてんのか?」
「別にふざけてませんよ。・・・斬るなら斬ってくださいよ」
そう言って素手のまま刀を握り、自ら首に近付ける私に3人は目を見開く。
そこで、勢いよく襖が開いた。
「トシ!って・・・あれ?誰?」
私を見て驚きの顔をする体格のいい男。
おそらく近藤勇。
彼は状況を理解するや否や、私の手を刀から離させた。
「素手で刀を握るなんて・・・。血だらけじゃないか」
そういって手ぬぐいを巻いてくれる彼を私はフードから覗いた目でじっと見つめた。