恋 ~REN~
「俺さ片思いの女がいるって話したじゃん。この話はさ、あんまり話したくない事だったんだよ。だから知ってる奴なんてごくわずかなんだ。でも、お前には素直に話ができたんだ。何かわかんねぇーけど、まだ知り合って少しだしお互いのこと何もわかんねぇーのに何でだろうな。。でも、久しぶりにその事誰かに話して少し心がスーッとなった。いつも胸に溜め込んでるものを少し出せた気がするんだ。
お前って不思議な女だなって思う。」


私は黙って話を聞く。


「そんでさ、その片思いの女は一生俺のものにはならないって言ったの覚えてる?」


そういえば、そう言ってたな。




そして、簾治は遠くを見つめながら話し始めた。



「俺とあいつが出会ったのは俺が高校生の時だった。あらしと初めて会ったコンビニあるだろ?あそこで出会ったんだ。

あいつの名前は、橘沙希(たちばなさき)。沙希と俺はあのコンビニで一緒にバイトしてたんだ。昔から俺は人と関わるのが嫌いだった。

沙希はさーそういう捻くれた俺を変えてくれたんだ。沙希といると心が安らげて自然に笑えてた。大好きだった。

でも、気持ちを伝えることはできなかった。臆病だったんだよな。
しかも、変なプライドがじゃましてさ。俺が告白なんてできるかってさ。バカだよな。
でも、お互いそういう関係でうまくいってたんだ。

あの時までは…。


ある時、沙希がバイトを何日も休んだときがあってさー。
携帯にかけてもつながらなくて、連絡がとれなくてさ。
俺たち学校も違うし、家も知らなかった。とりあえず、バイトに出てくんのひたすら待ってたよ。

そして、2週間ぐらいたって俺がバイト終わって帰ろうとしてたら沙希が事務所の外にいたんだよ。

びっくりしてさ、とりあえず今まで何があったのか聞いたわけ。

そしたら、
「明日、パリに引っ越すことになったの。簾治さよなら。今までありがとう。簾治に出会えてよかった。私の事忘れないでね。」
ってそれだけ言って走って帰って行った。

俺、何がなんだかわかんなくてさー。

ただ呆然とその場を動けなかった。冗談だと思ったよ。



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