state of LOVE
二階建て、2LDKのこの二戸一住宅は、学生が同棲するにはリッチ過ぎる部屋だと思う。

俺も聖奈も普通のハイツでいいと言ったのだけれど、ちーちゃんがここを一目で気に入ってしまったのだ。ちーちゃんが気に入ったとなれば、ハルさんが首を横に振るわけがない。

そんな経緯で住み始めたこの部屋の家賃は、今はうちと三木家で半分ずつ支払われている。


「俺じゃ頼りないってか」


そうボヤきながらクローゼットを開く。並んでいる大半は聖奈の服。これでも随分と置いてきたというのだから、この三倍はあるとみていいだろう。

異常なくらいにケイさんに愛情を注がれている聖奈は、つい二日前までは三木家の一人娘で。17年間大切に、溢れてまだ余るほどの愛情を注がれて育ってきた。ケイさんに。

それを「ちーちゃんのおこぼれです」と言ってしまうのだから、聖奈も聖奈で少しは歪んだところがあるのかもしれない。若しくは、ちーちゃんに対するハルさんの愛情の度合いが、異常を超越しているか、だ。


「後者だな」


否定する人物がいないのをいいことに、カバンに二人分の服を詰めながら俺の独り言も軽快で。下では「あー!」だの「ダメです!」だの叫んでいるから、慣れない幼子に聖奈が苦戦しているのだろう。
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