state of LOVE
「俺の独断と偏見でそうしたんだ。二人は知らないよ」
「勝手に俺の心を読むな」
「わかり易いよね、相変わらず。どうしてそんなに美緒ちゃんに執着するの?」
「別に…してねーよ」
「そうは見えないな。もしかして君の子?」
「だったら大変だな。俺と聖奈は破局だ」

あー!もうっ!わずらわしい!どうしてこうもストレートに話を進めてくれないのだか。

人前…と言うかちーちゃんと聖奈がいる手前、メーシーが「アキちゃんモード」にシフトチェンジするはずもなく、それが余計に俺を苛立たせる。

ゆっくりと足を組み替えて視線でそれを訴える俺に、メーシーは漸く堅い表情を作った。まぁ、作り物だけれど。

「事情は話してきたよ?」
「そうゆうこと言ってんじゃねーんだけど」
「どの道、今日警察に届けるつもりだっただろ?誰が連れて行ったって同じだよ」
「だから…」

「なんでめーしーが勝手にそんなことするん?」

普段とは明らかに違うちーちゃんの声色に慌てて視線を遣ったのは、何も俺だけではない。三人の視線が集中しても尚、ちーちゃんはグッと眉根を寄せて今までに一度も見たことのないような表情をしていた。

「千彩?」
「めーしーはおかしい。そんなことめーしーが決めることじゃない」
「あのね、姫。俺は愛斗の父親なんだ」
「知ってる。でも、それはめーしーが決めることじゃない」

ギッとメーシーを睨み上げるちーちゃんに、ハルさんはポカンと口を開いてしまっていて。チラリと振り返ると聖奈もケイさんも同じようにポカンとしているものだから、家族でも今まで一度も見たことがないちーちゃんなのだろう。

「姫、あのね?」
「めーしーがマナのパパやから何でも勝手に決めていいんやったら、ちさはセナのママやからセナのこと何でも勝手に決めていいん?」
「いや、そうゆうことじゃなくてね」
「どう違うん?同じことやん」
「いや、違うんだよ」
「ちさにはわからへん」

いつもにこにことしているちーちゃんは、怒っていても「ぷんぷん」とでも言いそうなくらい柔らかくて。

けれど今のちーちゃんは、「ぷんぷん」どころかメーシーを睨みつけて屁理屈を並べている。睨みつけられているメーシーは勿論、隣りで見ているハルさんもそれには驚愕の表情だ。

輪から弾かれた俺は、どこに彼女の怒りポイントがあったのだろう…と振り返ってみるのだけれど、やはり見当もつかなかった。

「セナは、自分のことは自分で決める。ちさはママやけど、セナの決めたことには口出ししない。ちゃんと応援する」
「あのね、姫…」
「美緒ちゃんはマナとセナの家族!めーしーが勝手に取ったらダメ!」

普段大きな声を出さないちーちゃん精一杯は、シンとしたリビングに見事に響き渡った。ポロポロと零れ落ちる涙に、咄嗟に手が伸びた。
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