state of LOVE
「ちーちゃん」
「マナ、美緒ちゃん寂しいって泣いてると思う。ママもパパもいなくて、マナもセナもいなくなったら、寂しいって泣いてると思う。お迎えに行こう?」
「それで怒ってたの?」
「ちさ寂しかったもん。ママもおにーさまもいなくなって、ちさ美緒ちゃんよりずっと大きかったけど、独りぼっちで寂しかった」

ギュッと握られた手に、ポタポタと涙が落ちてくる。そこからじんわりと何かが浸透して、満たされていく気がして。そっと髪を撫ぜてコツンと額をぶつけると、涙に濡れた猫目が俺を捕えた。

「大丈夫。心配要らないよ」
「美緒ちゃん…かわいそう」
「可哀想じゃないよ。これも美緒の運命なんだ」
「運命?」
「そう」

親指の腹で涙を拭い、そっと瞼に口づける。パンチの一発でも飛んでくるかと思ったのだけれど、どうやらハルさんは固まったまま動けないでいるらしかった。

昨日の今日だ。ショックの上にショックを重ねれば、誰でもこうなるのかもしれない。

…ということにしておこう。

「大丈夫。問題が解決したら、美緒は俺達の家族になるから」
「いつ?」
「いつかはまだわかんないよ。美緒のママもまだ見つかってないし、どうなるかはわかんない」
「美緒ちゃんはいつまで警察におるん?」
「取り敢えず、美緒のママが見つかるまでかな」

これが俺の最大限の妥協だ。と、茫然としているメーシーを睨みつける。それに気付き、どうやら正気を取り戻してくれたらしい。

けれど、作った笑顔は面白いくらいに引き攣ったものだった。

「姫、あのね」
「めーしーごめんね?怒って」
「いや、それはいいんだけどね。わかってくれた?」
「わからへん」

アッサリとそう言い切ってしまうものだから、さすがのメーシーも言葉を続けられなくて。

マリー相手では滅多にお目にかかれないその様子は、息子としてはとても興味深いものだった。
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