state of LOVE
「ん?牧本さん、どうしたの?」
「センセー、質問がありマース」
「何かな?」
「センセーのwifeはとってもbeautifulだとそこのgirlが言ってマース。really?」
「んー…」

ストンと腰を下ろしてニヤリと笑うレベッカは、相変わらず俺の心の内を全て見透かしているようで。

後で叱られても知らねーぞ。と言いながら足を組み換え、先生の答えを待った。

「どこかで見たのかな?えっと…秋山さんは」
「噂で聞きました」
「そっか」
「先生!俺も噂聞いたんだけど!」
「ん?」
「先生の奥さんって、モデルだったってマジ?」
「あー…どこからそんな噂が流れるんだか。そうだね。本当だよ」
「マジかよー!じゃあ超キレーじゃん!」

モデルをしているだけで綺麗だと決めつけるのは如何なものだろう。

確かにあの人は、アラフィフになった今でも綺麗だし、現役当時のスタイルを維持している。

けれどそれは、彼女がプライドの塊のような「MARI」という人物で、自分の魅力を最大限に引き出してくれる「MEIJI」という専属メイクがるからこそ成り立つ、一種の神がかり的なものなのだ。

でなければ、モデルの寿命などというものはまさしく花の如く短い。

「有名ですか?モデル科の人に聞いたらわかりますか?」
「んー…そんなに気になる?」
「なるー!」

あ、声が揃った。思わず口に出した俺に、隣のレベッカがクスクスと笑い声を洩らした。

「マナ、わざとやったでしょ?」
「ん?」
「メイク」
「あー…」
「親子ゲンカでもした?」
「んー…三日?四日ほど前に」

そう言えばそんなこともあった。と、頭の片隅に追いやられていた記憶を引っ張り出す。あの日は結局レベッカも三木家に合流し、珍しくケイさんの息子もその輪に加わり、わいわいがやがやと大騒ぎになった。

あの日の親子ゲンカを引きずっていない。そう言えば嘘になるかもしれない。
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