state of LOVE
「playboyデスネ」
「羨ましいだろ」
「チサ、マナが浮気してるデスヨー」
「えー!!」
「おいおい。こらこら」

どうやら何かが癪に障ったらしいレベッカは、ニヤリと笑ってちーちゃんを呼び寄せた。

それは卑怯だ!そう抗議することも許されず、グッとちーちゃんの顔が近付く。

「誰と浮気したん?」
「してない、してない」
「とーちゃ」
「んー。俺は美緒loveだよ」

うんと伸ばされた手を取り美緒に頬ずりをすると、ハルさんとレベッカが顔を見合わせて「やれやれ」と言わんばかりに両手を広げて肩を竦めた。

「親バカ全開やな」
「デスネー」
「いやいや。嫁バカのハルさんに言われたくないっす」
「お前もそうなるって」
「なりませんよ」
「マナはdadyみたいになるデスヨ」
「えー。それ色んな意味でヤダ」

確かに俺は、ハルさんみたくならないように努力するとは言った。けれど、だからと言ってメーシーみたくなるのもご免被りたいというもので。わざとらしく表情を歪める俺に、向かいに座っていた秋山さんがぷっと噴き出した。

「佐野君ってそんな顔もするんだね」
「ん?」
「もっとクールなのかと思ってた」
「いやいや。俺はいつだってcool&dryだよ」
「嘘だよー。だって、ハル先生や奥さんと話してる時、凄く楽しそうだもん」
「そう?」
「うん。佐野君の意外な一面知っちゃった」

へへっとはにかむ秋山さんは、やはりちーちゃんのそんな表情とよく似た空気を醸し出していて。聖奈もそんな頃はなかっただろうか…と記憶を辿ってみたのだけれど、俺の記憶の引き出しからは、残念ながら「どうしてですか?」と首を傾げる姿しか引っ張り出せなかった。

「うちの彼女もそれくらい可愛げがありゃねー」
「えっ?」
「そうゆうとこ、ホント真逆なんだよ」
「え?どうゆうこと?」
「んー…秋山さんはcuteだねってこと」
「とーちゃ!」
「はいはい。お前もcuteだよ」

擦り寄る美緒の髪を撫ぜながら頬を寄せる俺に、自分で帰ると言い張るちーちゃんを懸命に説得しようと試みているハルさんは遠くから呆れ顔だった。
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