state of LOVE
飴玉みたいなコロンと丸い目が印象的な、幼い女の子。
その女の子が、今回の一番大きなトラブルの火種だった。
液晶画面には、「公衆電話」の文字。
今時、公衆電話を探すのも一苦労だろうに、電話の向こう側の相手はわざわざその苦労をしてまで俺に電話をかけてきたのだ。
何のために?それは…
「美緒の…母親だ」
小さな声を押し出した俺に、レベッカが人差し指をくるくると回しながら近付いて来る。
「Let's push」
「おぉ」
「hurry」
神経は、きちんと指先まで通っているはずだ。脳からの伝達も遅くはない。
けれど俺の指は、通話ボタンに辿り着こうとはとはしなかった。
「佐野君?」
「マナ」
「わかってる」
すぅっと大きく息を吸うと同時に、細い指が俺とにらめっこを続けていた通話ボタンを隠した。
『もし・・・もし?』
不安げな女の声。細く、今にも消えそうなほどに小さな声。それが第一印象だった。
「はい。佐野です」
『あ・・・あの・・・』
「美緒の…お母さん、ですか?」
『美緒は・・・美緒はどうしてますか?』
「うちで預かってます」
『よかっ・・・た』
震えるその声が、「捨てて行ったのではない」と証明してくれた気がして。思わず表情を緩ませた俺の耳に届いたのは、期待していた言葉ではなかった。
『施設に・・・連れて行ってください』
「え?」
『施設に。私じゃもう育てられないんで』
「今、どこに?」
『言えない』
「ご無事ですか?」
『今は』
「警察には?」
『言わないでいてほしいの』
問い詰めるべきだろうか。美緒を置いて出た理由も、今どこでどうしているのかも。問い詰めるべきなのだろう。きっと。
けれど、俺はそれをしなかった。
その女の子が、今回の一番大きなトラブルの火種だった。
液晶画面には、「公衆電話」の文字。
今時、公衆電話を探すのも一苦労だろうに、電話の向こう側の相手はわざわざその苦労をしてまで俺に電話をかけてきたのだ。
何のために?それは…
「美緒の…母親だ」
小さな声を押し出した俺に、レベッカが人差し指をくるくると回しながら近付いて来る。
「Let's push」
「おぉ」
「hurry」
神経は、きちんと指先まで通っているはずだ。脳からの伝達も遅くはない。
けれど俺の指は、通話ボタンに辿り着こうとはとはしなかった。
「佐野君?」
「マナ」
「わかってる」
すぅっと大きく息を吸うと同時に、細い指が俺とにらめっこを続けていた通話ボタンを隠した。
『もし・・・もし?』
不安げな女の声。細く、今にも消えそうなほどに小さな声。それが第一印象だった。
「はい。佐野です」
『あ・・・あの・・・』
「美緒の…お母さん、ですか?」
『美緒は・・・美緒はどうしてますか?』
「うちで預かってます」
『よかっ・・・た』
震えるその声が、「捨てて行ったのではない」と証明してくれた気がして。思わず表情を緩ませた俺の耳に届いたのは、期待していた言葉ではなかった。
『施設に・・・連れて行ってください』
「え?」
『施設に。私じゃもう育てられないんで』
「今、どこに?」
『言えない』
「ご無事ですか?」
『今は』
「警察には?」
『言わないでいてほしいの』
問い詰めるべきだろうか。美緒を置いて出た理由も、今どこでどうしているのかも。問い詰めるべきなのだろう。きっと。
けれど、俺はそれをしなかった。