state of LOVE

 修羅場、修羅場、大修羅場

家へ戻ると、そこはもう戦場で。

わかってんじゃなかったのかよ…とくしゃくしゃと頭を掻きながらリビングの扉を開けた俺に、一番小さいのが砲弾の如く飛びついてきた。

「とーちゃー!え゛ー!」
「お前まで泣いてんのかよ。とーちゃん疲れてんのよ。勘弁して」
「あ゛ー!あ゛ー!」
「あー、よしよし」

取り敢えず美緒を抱き上げ、ポンポンと背中を叩きながらリビングを見渡す。

ソファの下で膝を抱えて小さくなっているちーちゃんと、それを見下ろしながら両手を握り締めて声を震わせている聖奈。そして、ソファに顔を埋めながら固まっているハルさん。

何がどうなってこうなったかはわからないけれど、美緒の件が意外とアッサリ片付いてしまった今、おそらくこれが一番の山場なのだと思う。頑張れ、俺。

「えーっと、どうしたんですかね、これは」

取り敢えず口を挟んでみたものの、夫婦間、親子間の問題は俺の手では解決不能だ。

いくら大魔王の息子で、いくら一度離婚の危機を救ったからとはいえ、誰も何も説明してくれないだろうこの状況で手を差し伸べるのは難しすぎる。


「どうしてわかってくれないんですか!ちーちゃんがいつまでもそんなだからうちの家はおかしいんです!セナを責める前にそれを何とかしてください!」


不機嫌絶好調だった聖奈は、相手を変えても口撃的で。それ先週怒ったとこなのに…とボヤキたいのはやまやまなのだけれど、必死に訴える聖奈にそんなことを言えるはずもなかった。


「陽彩にも同じ思いをさせるつもりなんですか!そうなるなら陽彩はセナが育てます!」


悲痛な叫びと共に、ドンドンと足を踏む聖奈。その音に、泣き止みかけていた美緒が再び喚き始めた。

「かーちゃー!かーちゃー!」
「あー…もう。何だろねー、この修羅場」
「とーちゃー!かーちゃー!」
「はいはい。わかってるよ。でもかーちゃん今忙しそうだから、な」
「あ゛ー!」
「わー…もう」

眠さと怯えがごちゃ混ぜになっているだろう美緒は、俺の胸をドンドンと叩きながら大泣きで。それを宥めようにも、聖奈の叫び声が邪魔をして上手くいかない。
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