state of LOVE
「マナ、ごめんなさい」
「いや。俺が悪かったよ。わかってやれなくてごめんな」
「大人に…なりたかったんです。でも、セナにはまだ無理だったみたいです」
「いいんだよ。無理しなくて」
「本当は…本当はずっとこうして甘えたかったんです。セナだけを一番にしてくれる人がほしかった」
「そだな。そうやって約束したのにな」

俺の一番にしてやる。俺はそう言って聖奈をこの腕の中に閉じ込めた。閉じ込めた後は好き放題。それを若さ故だと許してくれるならば、何度だって謝罪の言葉を紡ぐ。

「ごめん。俺が悪かった」
「美緒、とーちゃんが珍しく謝ってますよ。どうしますか?」
「とーちゃ、め!」
「そだな。とーちゃんが悪かったよ。ごめんな」
「とーちゃ」

無邪気にニッと笑ってくれる美緒に情けない笑顔を返すと、聖奈がそっと俺の頬に手を伸ばした。

「マナが言ってたことは本当でしたね」
「ん?」
「ケンカをしても、子供がいればまたお互いを好きになれるって」
「だな」
「美緒はセナが生んだ子じゃないですけど、セナとマナの娘です。美緒のおかげで、またマナを好きになりました」
「そっか」
「早く結婚しないと、他にいい人を見つけてしまいますよ」
「脅しかよ」

ふっと笑った俺に、聖奈は左眉だけを器用にクイッと上げてすまし顔をして見せた。

「早く夫婦になって、セナを安心させてください。それで今回のことは許してあげます」

そう言われてしまえば、嫌だ、ダメだと言うわけにはいかない。周りの大人達はそれを急かしているのだ。大介さんにもう一発、二発殴られる覚悟さえ出来れば、事はすんなりと運ぶだろう。

「じゃあ…そうしますか。来月の…俺の誕生日あたりに」
「はい」
「ちゃんとプロポーズもさしてくんないとか、勝手な女だねー」
「マナに言われたくないですよ」

ふふっと笑う聖奈は、いつもより数倍優しげで。

こうして背中を支えてくれるからこそ俺は立っていられる。好き勝手な振る舞いが出来る。そう思うと、愛しくて堪らない。

が、

背中を…という単語が妙に引っかかる。その引っかかりに首を傾げる俺に、背後から冷たい声が突き刺さった。
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