state of LOVE
さて、漸く落ち着いた。と、俺とハルさんが向かい合ったのが、もう日付を跨ぐ直前のこと。

わんわんと大声を上げて泣き体力を消耗した美緒は、寝息を立ててすっかり夢の中で。同じように体力消費量が半端なかっただろうちーちゃんと聖奈も、互いにパートナーの肩に頭を擡げながらうつらうつらとしていた。

「セナ、美緒連れて部屋で寝ろよ」
「ちぃ、寝るんやったら和室行きや?」

一応声はかけてみたものの、どちらも首を横に振って素直に聞き入れてくれそうにもない。諦めて顔を見合わせ、どちらからともなく肩に乗った頭を膝の上へと移した。

ハルさんの膝の上には、散々泣いて目を腫らしたちーちゃんの頭が、俺の膝の上には、大事そうに美緒を抱いた聖奈の頭がある。そっと頭を撫でるとうぅんと幸せそうに表情を緩めるところが、母娘ソックリだった。

「落ち着きましたね」
「やな」
「何だかとんでもないことになってたような気がするんですけど…何があったんですか?」
「いや…俺にもわからんねん」
「はい?」
「帰ったらもうこの二人がやり合うてて、それ止めようとして巻き込まれたんや」
「巻き込まれたって言うか、どうせハルさんが火に油注いだんでしょ」

ジトリと半目を向ける俺に、ハルさんは申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「情けない顔ですね」
「悪かった…思うとるんや。セナをここまで追い詰めとったやなんて」
「まぁ…追い詰めたのはおそらく俺ですけど」
「言いよったんや。セナだってパパが好きなのに!って」
「あー…ねぇ」

普段あれだけツンツンしていても、やはり聖奈はハルさんのことが大好きで。好きの裏返しだとは知っていたけれど、それを抑え込んでどうにもこうにも出来ない状態になっているとは気付かなかった。明らかに俺の配慮不足だろう。

「俺、約束したんですよ、コイツと付き合う前。誰かの一番になりたいなら俺の一番にしてやるって」
「一番…なぁ」
「わかってた…つもりだったんですけどね。俺にとってコイツはonly oneに変わりないし、そう接してきてたつもりだったんですけど」
「まぁ…そうは見えんかったわな」
「反省してます」

不器用だ。そう言い訳して済まされるならば、それで済ましてほしい。移り気だったわけでも、同時進行で事を運ぼうと思っていたわけでもないと神に…いや、魔王にだって誓える。

「俺、聖奈にマリーを望んでたんです」
「はぁ?とんでもないこと言うなよ。娘があんなんなったら俺泣くわ」
「いや、めちゃくちゃ言いますね、相変わらず」

ハルさんの方が、俺よりマリーとは付き合いが長い。関係を持っていたこともあるくらいだからよく知っているのだろうけれど、俺は彼女の息子なのだ。一番近くで、しかも誰より冷静な目で彼女を見て来た。

だからこそ、こんな風に成長せざるを得なかったのだ。
< 150 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop