state of LOVE
「なぁ、お前誕生日いつやっけ?」
「はい?」
「籍入れるんやろ?」
「あぁ。ちゃっかり聞いてたんですね。いつ入れてもいいって言ってませんでしたっけ?」
「別にあかん言うてない。あ、吸う?」
「いや、遠慮します」

シガレットケースを差し出され首を横に振ると、はぁーっと大きなため息を吐かれた。こっちはそれを我慢しているというのに。

「お前もさぁ、もっと素直に生きたらええと思うで」
「俺はいつだって素直ですよ。未成年に勧めないでください」
「いやいや。タバコの話やなくてさ」

細く白い煙を吐き出しながら、ハルさんはちーちゃんの頭をゆっくりと撫で苦笑いを零した。

「お前見てると、昔の自分思い出すねん」
「そうっすか?」
「俺も昔そんなんやったわ。何でも器用に出来るフリして、自分押し殺してな」
「そんなことしてるつもりないですけど」
「勉強もスポーツも何だって出来て、女にも男にもよぉモテた」
「俺の話聞いてます?」
「まぁ、ええから聞けや。恋愛だけはな、昔っから苦手やったんや。弟の嫁も恵介の嫁も、俺には幸せにしてやれんかった」
「俺は別に、苦手なモノなんてないですよ」
「恵介だけがな、俺をわかってくれたんや。なーんも言わんでも、恵介だけはいつでも「せーと!」って笑ってくれとった」

頼んでもない、寧ろ拒絶している自分語りを始めたハルさんは、とても切なそうに目を細めて笑った。

「俺にとって恵介は救いやった。信じるも裏切るもなくて、大事とかそんなん軽く超えてたな。あの頃の俺にとって恵介は、理想で、夢で、一部やった」
「何か…親友同士で同じようなこと言ってますけど」
「お前にとってベッキーがそうなんやろな。俺と恵介は運良く同性やったけど、お前は可哀想やな」
「可哀想とか…何ですか、それ」
「俺らは男同士やから、分け合いたいたいとは思っても同じになりたいとは思わへん。でも、お前らは違う。男と女は、同じになりたいと思うもんやろ」
「今度は決めつけですか。俺の言い分も聞いてくれてもいいと思うんですけど」
「却下やな」

これだから大人は…そう呟いた俺に懲りずにシガレットケースを差し出し、悪い大人が取れと急かす。仕方なく従ったものの、指の間に挟んでフィルターでトントンとテーブルを叩くだけで勘弁してもらった。
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