state of LOVE
「見えんから聞いてんねやろ。何かあったんか?まさか…」
「心配なんじゃない?姫のこと」

ニヤリと笑いながら口を挟んだメーシーに、聖奈は「もうっ!」と膨れて抗議をした。

「あはは。照れてるの?いいじゃないか。娘が母親を心配するのは当然だよ」
「そんなんじゃありませんよ」
「そっか。そやな…うん」
「何焦ってるの?王子」
「いや…ガキでも出来たんかと思って」
「えっ!?」

ハルさんの言葉に、ケイさんは大慌てで。これはまた聖奈に冷たくあしらわれるパターンだな。と思いながら、モグモグと口いっぱいに頬張る美緒の頭を撫でた。

「セナ!セナセナ!」
「違いますよ、けーちゃん」
「ホンマに!?」
「はい」
「良かったー!やめてや?子供なんか産まんでええからな?」

おっと。それは如何なものだろうか。と、慌てて駆け寄って来たケイさんにしっかりと抱き締められている聖奈の体を奪い返した。

「子供は産んでもらいますよ。二十歳になったら、ですけど」
「あかんっ!」
「ちゃんと検査してからって約束なんで、大丈夫ですって」
「あかんっ!」

大事な娘を危険な目に遭わせまいとするケイさんの気持はわからなくもない。実の父親ではないけれど。まぁ、それはヨシとして。

今回は何事も無く済んだけれど、ちーちゃんが聖奈を産んだ時はそれはそれは大変だったと聞いた。大人達は大騒ぎだったし、幼い俺も大騒ぎしていたらしい。

けれど、それはそれ、これはこれだ。

「愛斗、ガキは…」
「大丈夫ですよ、今は。コイツが故意的に妊娠しようとしない限りは」
「…そっか」

心配そうに言葉を押し出したハルさんが、チラリと聖奈に視線を向ける。それを察した聖奈が、美緒の口にスプーンを運ぶ手を休めて首を振った。

「セナは、子供は産みません」
「また言ってるよ」
「嫌です。産みません」
「言ってろ。離婚してやる」
「そんなセリフは、結婚してから言ってください」

頑なに拒否する聖奈に、ケイさんはとても満足げで。それを見て、複雑そうに苦笑いをするハルさんとメーシー。俺は当然不機嫌だ。
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