state of LOVE
「親になるんが怖いんやろ。とんでもない親ばっか見て育ったから」
「でも…」
「それだけじゃないと思うけどな、俺は」

言い終えてふぅっと一息吐くハルさんを見上げ、メーシーはその容姿には相応しくないくらいの苦々しい表情でハルさんにタバコの箱を差し出した。

「吸えば?うちは別に禁煙じゃないよ」
「ほな、遠慮無く」

珍しい…と眉を顰める俺の視線に気付き、メーシーはその箱をこっちに向けて肩を竦めた。

「一本どう?」
「いや、要らねーから」
「そう」

我が家は禁煙ではない。陽彩が出来たと知るまでは、ハルさんもケイさんもここで大手を振って喫煙していた。

けれど、マリーの前で喫煙することのないメーシーがここでタバコに火を点けることは、実に珍しいことだった。

「ストレス溜まってんの?」
「まぁね」
「大変だな、「メーシー」やるのも」
「それなりにね」

メーシーの性格からして、いくら本性を知られているからとはいえマリーの前で仮面を外すことはない。怒った時は別として。

疲れるだろうに…と父を思いやる立派な息子のフリをして、俺はその場を切り抜けようとした。


そう。メーシーが言わんとすることを察してしまっていたから。


「マナと一緒だよ。セナちゃんは、他にマナの愛情を奪われるのを恐れてる。それがたとえ我が子だったとしてもね。娘なんて産まれた日には、危ないんじゃないかな…おたくの娘さん」


あーあ。容赦なく言ってしまった、この人は。

頭を抱えたくなった俺と、実際に抱えてしまったハルさん。

そりゃそうだろう。ハルさんは聖奈の父親で、今放たれたメーシーの言葉は、「君の育て方が悪かったんだよ」と指摘しているようなものなのだから。

けれど、そこで終わらないのが、この「佐野明治」という人物で。
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