state of LOVE

「王子は姫しか見てなかった。ずっと、いつだってね。見逃したんだよ。大事なセナちゃんのＳＯＳのサインを」
「…やな」
「でも、今更それはどうにかできやしないからね。あとは旦那様に任せよう」
「はいはい。自分もそうだったくせによく言うよ」

俺と同じだと言うならば、自分もそのサインとやらを見逃したと言っているようなもので。

俺がそこにツッコむことをわかっていて敢えて言うのだから、この人の精神構造はいったいどうなっているのだろうか…と疑問視したくもなる。

「俺は違うよ。気付いてて、敢えて何もしなかった」
「うわ…どこまでサディストなんだよ」
「サディストって言うより…俺には麻理子以外どうでも良かった」
「そうやって息子と娘の存在を否定するのはやめようか、父よ」
「セナちゃんはそれを望んでる」

その言葉に、俺は緩く首を横に振った。

「俺には無理」
「君のonly oneはセナちゃんじゃないの？」
「そうだけど…」

確かに俺のonly oneは聖奈で、それを他に移すつもりも予定もこの先ずっと無い。だからこそ結婚しようと思ったし、学生ながらに収入を得て二人で生活し、これからもずっとそれを続けていく気でいる。

けれど、俺はそんなタイプではない。


「別に…愛されてなかったとは思わねーけど…」


前置きをし、大きく息を吸い込む。傷付けるだろうか。二人の父親を。そんな思いが、言葉に待ったをかける。

「思わないけど？」
「んー…まぁ…」
「言えよ。麻理子はここに居ない。気にすんな」

所謂「アキちゃんモード」にシフトチェンジしたメーシーに、ハルさんは一瞬だけ目を瞠った。

けれど、知らないわけではない。それなりに付き合いも長いはずだし、何より志保さんの店にも顔を出しているのだから。