state of LOVE

難しそうな顔をして父親二人が下りてきたのは、聖奈が二階へ駆け上がってから一時間後のことだった。腕の中の美緒はすっかり眠ってしまい、それでも美緒を離そうとしない俺をメーシーがからかっていた。

「どうでした？話し合いは」
「どうもこうもないわ。千彩に似て頑固やわ、あいつは」
「でしょうねー」

軽く流すフリをして、憂鬱な気分を悟られまいと視線を逸らす。既に悟りきってしまっているメーシーは、有り難いことにただ「ふふっ」と笑うだけに済ませてくれた。

「セナがあんだけ嫌がってんねんから、無理に産ませることないって。それに、まだ出来てもないんやろ？」
「出来てませんよ。ハルさんと約束しましたし。それに…結婚前ですからね」

いくら結婚すると言えど、先に作ってしまうのは如何かと思う。それはルール違反だ。と、さすがの俺でも思う。


「心配要りませんよ。成人する頃には、あいつの方から欲しいって言いますから」


そんな自信はどこにもないけれど。と、付け加えずに呑み込んで立ち上がる。

「先に休みます。ごゆっくり」
「あれ？寝るんだ」
「おぉ」
「ご機嫌取り？」
「明日早いんだよ。平日早く帰ってっから、休日くらいまともに仕事しねーとレベッカに説教くらう」
「そういやコレクション用のデザインやってるんだって？マナは腕が良いって社長が誉めてたよ。自慢の息子だ」

そんな歯の浮くようなセリフも、メーシーだから許されるというもので。頷くだけ頷いてそれを受け取り、重い表情をしたままのハルさんとケイさんに苦笑いで応えて二階へと上がった。