state of LOVE

腕の中に幼児を抱き、ソファで眠る聖奈。


「何やってんだろねー、コイツは」


リビングに入ってまず目に入った光景に、俺の口からはそんな呆れの言葉が洩れた。

小さな体の聖奈の腕に抱かれている、更に小さな体。

これはいったいどうしたことだろうか。我が佐野家には幼児はいないし、勿論三木家にもいない。

あぁ、乳幼児はつい二日ほど前に生まれたけれど。

「セナさん。もしもし、セナさん」

声をかけても揺すってみても、聖奈の瞼は固く閉じられたままで。いくら小さな体とはいえ、ゴロンと横になられていては俺が座るスペースが無い。諦めてラグの上に腰を下ろし、聖奈の腕の中に納まっている幼児の顔を覗き見た。

「誰…だっけ？」

見覚えがあると言えばあるし、無いと言えば無い。どこかで見たような…そう思いながらまじまじとその幼児の顔を見つめていると、パチリと双眸が開いて視線がかち合った。そして、小さな手が伸びてくる。

「痛いんですけどねー」

いきなりパチンッと頬を叩かれてしまっては、いくらフェミニストと言えど多少はムカッとくるというもので。その手を取ってメッと叱ると、泣くどころか幼児はキャッキャと笑い始めた。

そして、モゾモゾと活動の態勢をとる。そんなことはお構いなしに、うちの婚約者さんはまだ夢の中なわけで。

「よし。来い」

そう言って手を広げると、幼児はスルリと聖奈の腕の中から脱出して俺の膝の上に収まった。

男か？女か？

それを確認しようにも、どちらとも言える顔つきに、中途半端に伸びた髪。聖奈のＴシャツをワンピース代わりに着ているものだから、さすがに見当がつかない。

「ちょっと失礼」

そう言って太ももの上で立たせ、やけにスッキリとしたお尻に小さく首を傾げながらＴシャツの裾を捲った。

うん、女の子。

ただ、おそらくまだ二歳にもなっていないだろう幼児がおむつをつけていないのは如何なものだろうか。