state of LOVE
俺が与えられた…基、自ら奪い取った家事をこなし、ついでに着替えを済ませてリビングに下りた頃には、既に一家がダイニングテーブルを囲って勢揃いしていた。


新妻は借り物のエプロンを外し、「後で自分の物を取ってきますね」と柔らかに微笑んでいる。

それに「それ使ってていいよ」と胡散臭さ全開の笑みを浮かべるアラフィフは、俺の実の父。

並んだ朝食を眺めながら「セナは何でも出来るなー」と嬉しそうなもう一人のアラフィフは、妻の育ての父。

そして、幼子を抱きながらご満悦の表情でぷにぷにとその頬をつついているロリ…いや、最後のアラフィフは妻の実の父。

そしてそして、そのぷにぷにの餌食になりながらも、分け与えられたたまご焼きを手掴みで豪快に先取りしているのが娘。


凄く嫌な家族の構図だ。

と、我ながら自分を追い込むことしか出来ない貧相な想像力に軽く眩暈がした。

「あれ?食べずに出ますか?」
「いや、いただきます」

軽く首を振って嫌悪感漂う未来予想図もどきを振り払い、家を出るまで自分の定位置になっていた場所に着席する。すると、すぐさま温かいご飯の盛られた茶碗とみそ汁の入った碗、そして小さな手をたまご塗れにした娘がやってきた。

「汚いぞ、娘」
「だー」
「いつから美緒ちゃんはマナの娘になったんですか?」

新妻の白い目が痛い。ここは微笑んで「パパったらー」と言ってほしかったところだ。

「さぁ。マナの邪魔になりますから、美緒ちゃんはこっちに来てください」
「やー」
「ワガママはダメですよ。マナはこれからお仕事なんですから」

必死に縋り付く美緒を力一杯剥ぎ取り、聖奈は自分の前に美緒用に用意しただろう皿を引き寄せた。

「ここで食べましょう」
「やー」
「マナはこれからお仕事なんです。お仕事を邪魔する子は悪い子ですよ」

聖奈の言葉に、美緒ではなくハルさんの眉根が寄る。一体何なんだ…と問う間も無く、ハルさんは箸を置いて聖奈を見据えた。
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