state of LOVE
「セナ」
「はい?」
「そうゆう育て方はよぉない」
「どうしてですか?」
「子供には我慢させるべきやない。せやないと、自分の言いたいことを押し殺すしか出来んようになってまう」
「過保護も大概にしてください。それに、美緒ちゃんはセナの子供ではありません」

聖奈にしてはやけに好戦的だ。と、みそ汁を啜りながら思う。

このメンバーが揃うとロクなことが無い。二人で暮らし始めてからは、それなりに平和だったというのに。

「俺が過保護?」
「ちーちゃんに対してだけですけどね。セナには見向きもしなかったですから」
「そんなことあらへんわ」
「あら?おかしいですね。セナにはいつもけーちゃんと一緒にいた記憶しか残ってませんね。記憶障害でしょうか」
「俺が構うん嫌がったんはお前やろ」
「ちーちゃんに疎まれるのは嫌でしたからね。二人だけの世界で生きればいいのに。子供なんて作らなければ良かったのに」
「セナちゃん、言い過ぎだよ?」

どうやら聖奈の口は、朝から過激に絶好調らしい。グッと唇を噛むハルさんと、苦笑いで止めるメーシー。ケイさんは、「あちゃー」よりも「オロオロ」が良く似合う。

「そんなにちーちゃんが好きなら、ちーちゃんだけ大事にして生きれば良かったのに。セナを産ませるべきではなかったですね。そうしていたら、ちーちゃんは死にかけずに済んだのに」
「せっ…セナ。ちょっと落ち着こうや」
「ダメだよ、そうゆうこと言っちゃ」
「自分勝手なんですよ。愛妻家はとてもいいことです。尊敬します。でも、度を超しているとただの自分勝手です」
「セナちゃん…」
「そんな夫婦の間に産まれた子供がどう育つか、セナやマナを見ればわかりますよね。失敗です。子供を作るべきではなかった」

「いい加減にしろ!聖奈!」

パシンッと響いた乾いた音に、ハルさんとケイさんは目を丸くして硬直していた。

そりゃそうだろう。俺は何と言っても、顔や性格だけではなくフェミニスト要素までメーシーから受け継いだ、立派な佐野家の長男なのだ。そんな俺が愛情表現以外の部分で聖奈に手を上げるなど、二人にとっては思いもよらない緊急事態なのだろう。

けれど、メーシーの息子だからやるのだ。メーシーだって、マリーが間違ったことをすれば叱りつけるし手も上げる。それをこの二人は知らないだけだ。
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