state of LOVE
「落ち着け」
「落ち着いてます」
「なら話せ」
「嫌だと言ったら?」

いつもより強気な聖奈は、じっと俺の右目を見つめて語気を強めた。

これは、完全抵抗の意思表示。それに素直に従ってやるほど、佐野愛斗は甘くない。寧ろ、超が付くほどにサディストだ。

自覚しているだけ安全だろう。

「別れる。家も出て、俺は実家に戻る。お前は好きにしろ。お前とは一緒に暮らせない」
「ちょっ…マナ?」
「メーシーは黙ってて」
「本気ですか?」
「これを本気じゃないと思うなら、お前は相当なバカだ。俺はこの人達とは違う。そんなバカを笑って受け入れるような男だと思うな」

立ち上がり、メーシーから強引に美緒を奪い取ってカバンを持つ。そして、聖奈を振り返った。

「意地になって俺を拒絶するような女に、俺のonly oneである資格は無い。俺は、俺だけを愛して生きればいいって言ったはずだ。それが出来るなら一生お前の傍にいるって。出来ないなら愛さない。俺もお前を拒絶する」

黙って伸びてきた手を振り払うと、漸く大粒の涙が見れた。朝からとんだ労力を消費した…と、ため息も漏れるというものだ。

「言えよ。今なら許してやる」
「ごめん…なさい」
「謝れとは言ってない。理由を話せって言ってんだよ」

わざと苛立ったフリをして急かすと、俺の演技に気付いたメーシーが口元に手をやってニヤリと口角を上げた。

さすがですね、お父上。

と、言葉には出さず頷くだけで伝えておいた。
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