state of LOVE
「俺の子は、きっと色が違うんだろな」

あめ玉みたくコロンと丸い美緒の瞳は、言うまでもなく両目の色が同じ。世間ではそれが普通で、当たり前だという認識だ。

だから、俺やレベッカ、そしてマリーみたく左右の瞳の色が違う人間は一歩距離を置かれる。

「愛されてるなんて思ったことねーよ。好きだったのはホントだけどな」
「だー」
「贅沢なんだよ、アイツは。溺愛されて育ったくせに」

俺からしてみれば、今朝の聖奈の主張はただのワガママだ。あの場を治めるためにああは言ったけれど、腹の底では「ふざけんな!」と怒鳴りたかった。

人間には欲がある。

一つが満たされればまた一つ。
そしてまた一つ。

そうしていくうちに、どんどん欲深くなるのだ。何を与えられても満たされないと思うようになる。

「もしお前が捨てられたんだとしたら、俺達が育ててやるよ。まぁ、昼間の託児所行きは目を瞑ってくれよ」

一応、学生なもんで。と、必要無いだろう言い訳を添えて、指を銜えて睡眠体勢に入った美緒の頭を撫でる。

時折泣き声は聞こえてきていたけれど、虐待などの不幸な気配はなかった。望まれて産まれてきたかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。愛情にしても同じ。よそ様の親子関係にまで気を配れるほど、俺に余裕は無い。


「何だろねー、愛って」


両親からの愛、両親への愛。
妹からの愛、妹への愛。
聖奈からの愛、聖奈への愛。
そして、未だ見ぬ我が子からの愛、我が子への愛。

それらが綺麗に円を描かず歪な形をしているから、俺はこんなにも愛情に対する執着心が強いのだと思う。

自分でもわかっているのだけれど、こればかりはどうしようも無い。


「お前は俺が愛してやるよ。セナには上手く言ってやるから心配すんな」


だらしなく伸びた前髪が、眠る美緒の目に鬱陶しくかかる。帰ってからメーシーに整えてもらうとして、今は取り敢えず…と頑張って手を伸ばし、向かいのレベッカのデスクにあったゴムで結わえた。

ちょんと咲いたヒマワリが、季節のズレを感じさせる。
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