state of LOVE
早く来いと言ったはずのレベッカが到着したのは、そう告げてから一時間と少し経った頃だった。

「お前の早くは一時間か!」と声を荒げる俺を無視し、レベッカはご機嫌に棒付きのあめ玉をしゃぶる美緒に夢中だ。

「聞けよ、ひとの話を」
「聞いてる、聞いてる。very cute!」
「全然聞いてねーな、お前」

大方こうなることくらい予想はしていたけれど、やはりそれはそれで腹立たしいというもので。苛立ち任せにケイさんからプレゼントされたコーヒーメーカーのスイッチを押すと、ふふっと笑い声が聞こえた。

「やめろ、その笑い方」
「どうして?」
「お前とメーシーとの仲を疑いたくなる」
「傷口に塩を塗るような発言は遠慮してくだサーイ。MEIJIとはあれ以来何もない」
「昨日一緒にいたくせに」

疾しいことはないのかと言った俺に、メーシーは「無いとは言い難い」と言った。俺をからかう以外の目的で言ったのだとすれば、未だどちらかが想いを断ち切れていないということになる。

ただでさえあれ以来頻繁にうちの実家に出入りしているレベッカは、マリーのイライラの原因になっているというのに。

「離婚は勘弁してくださいよ。こっちはまだ結婚前なんですから」
「そんな心配要らない。日本の性犯罪増加について話してただけ」
「は?」
「最近うちのハイツの周りに不審者が出るの。危ないから家に来いってしつこいのを、一時間と少しかけて断っただけ」
「そりゃいい心がけだ」

美緒の頭に咲いたヒマワリを弄りながら、レベッカは苦笑いを見せる。

何てことない。断ち切れていないのはメーシーの方だ。

あんなに嫁バカのくせして、どうして他の女に目を向けることが出来るというのだろう。どこにそんな暇があるのか、是非ご教授願いたいものだ。

「マリコに嫌われてることくらいわかってる」
「あの人は嫌ってねーよ」
「嘘よ」
「嘘じゃない。好いてないだけ」
「同じじゃない」
「ちげーよ。日本語ってのは繊細なんだよ」

駆けてきた美緒を抱き上げた俺に、「だから日本人って嫌い」と99%欧米人寄りのハーフは言った。
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