state of LOVE
「何?妬いてんの?」
「違います!」
「あははっ。可愛いねー、お前は」
「もうっ!」

ぶぅっと膨らんだ頬を指先で押して空気を抜き、軽く唇を重ねてからよしよしと頭を撫でる。それだけで聖奈は機嫌を直してくれて。さすが無理をしてでも毎日早めに帰ってきていただけある。と、一緒に暮らし始めてから帰宅時間を早めた成果をここで実感した。

「兄ちゃんと風呂入ろうな、美緒」
「だー」

濡れたままのTシャツを身に纏った美緒が、嬉しそうに抱きついてくる。おかげさまで、上から下まで濡れてしまった。

「水洗いして、洗濯機に入れといていい?」
「はい。後で洗います」
「洗濯機が、な」

ぷっと笑うと、聖奈はむぅっと頬を膨らせて廊下を進んで行く。その後を追って玄関まで辿り着くと、ポンッと頭に手を置いて美緒を抱いたまま腰を屈めた。

「気をつけて行けよ」
「すぐそこですよ」
「それでも、だ」
「わかりました。すぐに戻ります」

どうやらご機嫌取りは大成功したらしい。にっこりと微笑んで扉を閉めた聖奈が軽い足取りで階段を下りて行く音を確認し、よいしょと美緒を抱き直してバスルームへと向かった。
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