state of LOVE
残念ながら、俺達カップルは解り合えていないのが現状。

俺色には染まったものの、やはり聖奈は俺とは違い「汲む」とか「悟る」といった便利な機能を標準装備していない。後付けされたのは、おそらく「諦め」だけだろうと思う。

「このまま放っておけねーだろ?」
「どうしてですか?警察の方にお任せすれば何とかしてくれます」
「いや、そうゆうのじゃなくてさ」

犬猫ではないにせよ、拾ったからには拾ったなりの責任というものがあるのではないだろうか。だからハルさんはちーちゃんを守ってきたし、龍二の親代わりになった。その人の遺伝子を受け継いでいるというのに、聖奈にはそんな意識は無いらしい。

拾う能力ばかり受け継いだのか、コイツは。

「今すぐどうのこうのするって言ってねーじゃん。もう少し待とうっつってんの」
「手遅れになったらどうするんですか?」
「手遅れって?」
「ほら…捨てられたとかその…」
「美緒の前でそんな話すんな」
「あっ…ごめんなさい」

いくら言葉がわからないと言えど、子供の前でするような話ではない。取り敢えずそうするから。と話を終わらせ、運ばれてきたハヤシライスを受け取った。

「美緒ちゃん預かろうか?」
「え?」

驚く俺に「ご飯、食べ辛いでしょ?」と首を傾げる志保さんには、きっと俺の心の内が手に取るようにわかるのだろう。頷かない俺に小さなスプーンを渡し、トレーを持つメーシーを急かす。

「早くしないと冷めちゃうよ」
「この程度で冷めるかよ」
「それ置いたら、アキちゃんはあれ持って事務所に行ってね」
「は?俺、今日休みなんだけど」
「レベッカ、何も食べないで行ったのよ。コンビニじゃ可哀相でしょ?」
「早く言えよ。意地の悪い女だな」
「アキちゃんには負けるー」

うふふっと笑いながらキッチンへ戻った志保さんを一度睨み付け、メーシーはやれやれ…と肩を竦めて振り返った。

「食べ終わるまでには戻るよ」
「おぉ」

スプーンを口へ運びながら頷くハルさんと、美緒の口へスプーンを運びながら首を傾げる俺。向かい合った二人は対照的だった。

「何で志保さんが知ってんの?」
「ん?聞いてない?」
「聞いてねーから言ってんの」

突っ掛かる俺に、「それもそうか」とメーシーが笑う。もったいぶらずに早く言え。そんな言葉は、小さな手でぐちゃりとハヤシライスを掴んだ美緒が呑み込ませてくれた。
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