state of LOVE
俺が三木家の危機を救ったご褒美としてこの部屋を借りてもらい、夏休みの終わりに引っ越しを済ませた。

学校が終わると事務所へ直行し、脇目もくれずにさっさと仕事を終わらせて家に戻ること三ヶ月。レベッカとの浮気の疑いも晴れ、うちの両親も三木夫妻も相変わらず仲睦まじく、ついでに龍二と莉良の関係も良好。

予定日よりは一ヶ月近く早いものの、ちーちゃんも無事に男の子を出産した。希望の女の子でなかったことにちーちゃんは不満げだったけれど、何より無事だったことに大人達…特にハルさんとケイさんは号泣していた。

それが、つい二日前の出来事。


「今度はお前か、こりゃ」


シャンプーのポンプをプシュプシュ押して遊んでいる美緒からそれを取り上げ、メッと叱ってみせる。キャーっと楽しげに声を上げて床を這う美緒を抱き上げ、驚かせないようにゆっくりと湯船に身を沈めた。


日本に戻って以来、俺の周りではあれやこれやとトラブルが絶えない。NYにいた頃は平穏無事な毎日だったのに。

相変わらずレベッカとは一日の大半の時間を共有しているし、聖奈に対しての執着もまぁ…それなりにある。けれど、離れて眠ることが無くなった分だけ、俺の精神状態は安定してきた。Maybe.

「お前のママはどこ行ったんだろな」
「だー」
「ママだよ、ママ」
「だー」

これくらいの年の子供がどれくらい話せるものなかのはわからないけれど、ママくらいは言えても良いのではないだろうか。ペタリと額に張り付いた美緒の前髪を避け、じっと瞳を覗き込む。

「大きくなったら美人になるな、お前」

飴玉みたくコロンと丸い目と、びっしりと揃ったまつ毛。鼻ぺちゃだけれど、それもそれで愛嬌があって可愛らしい。何より、幼児特有のぷっくりとした頬が俺のお気に入りだ。
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