state of LOVE

 愛しい、愛しい宝物

一度事務所に車を取りに戻り、俺達は揃ってちーちゃんと三木家の長男の入院する病院を目指す。その道中、チャイルドシートで自由を奪われた美緒は、何だかわからない奇声を発しながら怒り狂っていた。

「美緒ちゃん、少し大人しくしてください」
「言ってもムダだよ」
「でも…」
「仕方ねーだろ。まだガキなんだから」

聖奈が言いたいことはよくわかる。あと五分これが続けば、耳がどうにかなってしまいそうなくらいの大音量だ。子供の泣き声どころか、大音量というものに無縁な俺達にはかなりキツイものがある。

けれど、俺の言い分もわかってほしい。

「煩い…」
「諦めろ。ガキなんてものは、そうそう親の思い通りになるもんじゃねーよ」
「ホントに引き取る気なんですか?」

不満と言うか、不安と言うか。運転中の俺をじっと見つめるその瞳は、何かを懸命に訴えていた。

「家族が誰もいなかったらな」
「もう…決めたんですね」
「おぉ。今なら結婚やめれるけど?」

前を向いたまま尋ねた俺に聖奈は「いえ」と短く返事をして、ギュッと俺のパーカーの裾を握った。

「子供が生まれる度に、こんな思いをしなければならないんですかね」
「生まれたら忙しくてそれどころじゃねーよ、きっと」
「だといいんですけど」
「暫く弟の面倒見てみりゃわかんじゃねーか?」
「そう…ですね」

はい、到着。と、叫び続ける美緒を解放する前に、一度ジッと視線を合わせて聖奈に口づける。

わかっていないわけでも、理解出来ないわけでもない。

けれど、俺達はいつまでも子供のままではいられない。

いくら抵抗しようとも、いつかは大人にならなければならないのだ。結婚をしようというのならば尚更。
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