state of LOVE
ゆらゆらと体を前後に揺らしながら美緒を抱いているちーちゃんは、いつもより数段ふわふわと優しい色が増していた。

「マナもちっちゃい時こうしてたよ」
「俺も?」
「うん。レイちゃんが産まれる時うちの家におって、ちさと一緒に寝ててん」
「へぇ…」

その当時の記憶が無いことが悔やまれる。貧相なマリーのものに比べたら、豊満なちーちゃんのものはさぞかし心地好かったことだろうに。

「何嬉しそうにしてるんですか」
「いや、別に」
「はるもそうやって怒ってたよ」
「え?」
「俺のんやから嬉しそうに触るな!って」

「こらこら。そんな要らんこと言わんでええねん」

和やかだったはずの空気が、一瞬にして凍りつく。勿論、俺と聖奈の周りだけ。

ヤバい。これは逃げ場が無いし言い訳も出来ないぞ…と、顔を引き攣らせる俺と、後ろ手に扉を閉めながらにこやかに笑うハルさん。その落ち着いた様子に驚いたのは、何も俺だけではない。

「あっ!はるいらっしゃーい」
「おぉ。誰の前でもほっぽり出すなよ。愛斗の方がびっくりしとるやないか」

呆れ顔のハルさんは、何故か疲労の色を滲ませていて。ゆっくりと椅子ごと窓際に移動した俺に、ふっと笑って髪を掻き上げた。

「俺、別に怒ってへんけど」
「え?怒ってないんですか?この状況で?」

驚きの声を上げたのは、俺ではなく聖奈だった。どこか具合でも悪いんですか?と真面目な顔をして問う聖奈に、ハルさんは苦笑いで答える。

「お前は俺をどんな目で見てんねん」
「うーん…極度のちーちゃんバカ」
「まぁ…否定はせんけどな」

ゆっくりとベッドに腰掛けたハルさんは、ギュッとちーちゃんの頭を抱いて唇を寄せた。

仲睦まじい夫婦の様子にホッと一息つく俺と、何を思ったのか慌てて部屋を飛び出した聖奈。俺は静かにその場に留まることを選んだ。
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