state of LOVE
「ヒロがもうちょっと大きなったらな」
「えー。そしたらちさ、おばーちゃんになっちゃう」
「ならへんわ。そんなすぐなるんやったら、マリなんかもうババアやないか」

「どうしてそうゆう失礼なことが言えちゃうのかなー、王子は」

入り口から聞こえた声に視線を遣ると、目を細めたメーシーが聖奈の肩を抱いて身震いするほど悪魔色の強い笑みを浮かべていた。

反射的に「触るな!」と声を上げかけて、喉の奥まで引っ込める。ちーちゃんの前ではイイコでいたい。無駄だとわかっていても、努力を怠ってはいけない。

「マリちゃんはばばーじゃないよ」
「ねー。酷いこと言うもんだ」
「はる、めっ!」
「め、ときたか」

寄って来たメーシーに身構えたものの、グリグリと足を踏まれハルさんの表情はみるみるうちに歪んでいく。そんな大魔王の悪戯を止めようなど、息子である俺が思うはずはない。ここはハルさんを犠牲にすることで捕えられた恋人を救出しようと決め、ゆっくりと腰を浮かせた。

「どこ行ってた。セナ」
「陽彩の様子を見に行ってました」
「おぉ。どうだった?」
「思ったより元気でした」
「そりゃ良かった」

そっと腕を引くと思ったより簡単に聖奈の体は解放され、いつも通り俺の腕の中にすんなりと収まった。

「心配して飛び出してったのか?」
「はい」
「そりゃいいお姉さんぶりだ。でも、一言かけて行け?」
「はい。ごめんなさい」

どうせそんなことだろうとは思っていたのだけれど、まさか鈍い聖奈がハルさんの表情一つでそれを察知するとは思わなかった。

本当は、鈍いのではなくてわざとなのではないだろうか。いくらちーちゃんの娘だからと言っても、半分はハルさんの血が流れているわけで。それも否めない。

と、疑心暗鬼なった瞬間だった。
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