state of LOVE
「俺の携帯番号書いて、隣のドアに挟んどけ」
「ポストに入れなくていいんですか?」
「ドアに挟んでたら、戻ったか戻ってないかわかるだろ」
「あっ。それもそうですね」

カバンの中から手帳が取り出され、そこに二列の数字が並べられる。俺と聖奈の携帯番号だ。

「お前のは書かなくていいよ」
「どうしてですか?」
「わざわざ他人様にお前の番号教える必要なんかねぇって言ってんの。自分の嫁を他に分け与えられるほど、俺の心は広くねぇの」
「それもそうですね」

またもやアッサリと今度は肯定され、せっかく作り出すはずだった甘い空気が一瞬にして遠退いてしまった。

周りにバカップルだと言われるわりに、俺達の、特に聖奈の俺に対する態度は実にアッサリとしたもので。事あるごとに「ちーちゃんみたいにはなりません!」と断言する聖奈を、ちーちゃんファンの一人として実に残念に思う。

唇を尖らせた俺にふふっと軽く笑うと、聖奈はビリッとそのページを破ってひらつかせた。

「お隣に挟んできますね」
「おぉ」

付いて出ようとする美緒を抱き上げ、玄関まで見送る。あぁ…バカップルの「バカ」は俺だけか。と、思わずため息が漏れた。

「俺、セナがいないと死ぬかも」

ボソリと零した言葉を受け取った美緒が、不思議そうに首を傾げる。ぷにっと頬を突くと、笑顔が返された。

「早く子供欲しいかも…」

もし聖奈との間に子供が生まれたならば、ハルさん…いや、ケイさん以上に親バカになれる自信がある。女の子なら尚更だ。言わずもがな、ケイさんの親バカ対象は、我が子の太一君ではなく聖奈なのだけれど。

「あれっ。まだそこに居たんですか」
「すいませんね、バカで」
「え?誰もそんなこと言ってませんよ?」

覗き込もうとする聖奈の視線を避け、足早にリビングへと戻る。そのままソファに美緒を置き、着替えを取りに二階の部屋へと向かった。
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