state of LOVE
「いらっしゃい、おにーさま」
「おぉ。おおきゅうなったな。ん?」
「この子は美緒ちゃんです。説明は中でします。今日は皆さんが揃ってるんですよ」
「おぉ。皆さん?」
「そうですよ。それに、紹介したい人もいるんです」
「紹介?」

どんどん声が近付いて来るにつれ、鼓動が耳に近くなるような感覚に襲われる。

あぁ、これはかなり緊張する。

と、今更ながら、聖奈の実の父親に対して何の緊張感もなく接することが出来ていることを有り難く思う。

「皆さん、おにーさまが来られましたよ」
「いらっしゃい、大介さん」
「おー!ハルさん!出産の時は行けんで申し訳なかったです」
「いやいや。今回は無事に終わりましたから」
「お久しぶりです、吉村さん」
「こんばんわー」
「おー!佐野さんに三倉さんも!お元気でしたか?」
「はい。僕ら去年こっちに戻ったんですよ。お元気そうで何よりです」

わいわいと挨拶を交わす大人達は、勿論20年近く前からの顔見知りで。この中で唯一初対面となる俺が小さくなってしまうのは、致し方ないことだと思ってほしい。

「おにーさま、紹介します。セナの恋人のマナです」
「初めまして。佐野愛斗と申します」
「こ…っ!?恋人っ!?」
「はい。お付き合いさせていただいてます」

深々と下げた頭を戻してにっこりと笑顔を作ると、大介さんの目は途端に丸くなった。そして、俺とメーシーとの間で視線が何度か行き来し、ポカンと口が開く。

予想通りと言えば予想通りなのだけれど、ここまで見事にやってくれるとは思わなかったので、いかに表情を崩さず笑いを堪えられるかを試されている気がしないでもなかった。

「えーっと…佐野さんの息子さん、でっか?」
「はい。佐野の息子です」
「はぁー…ほな、あのちー坊にべったりやったボク?」
「あぁ…僕は覚えてないんですが、そうだったみたいですね」
「ひえー…こない大きなってもて。それにえらい男前になって」
「いえ。とんでもないです。あの…」
「はい?」

これを拍子抜けと言うのだろうか。付き合ってると言った時点で一発は覚悟していたのに、そんな気配はどこにもない。それどころか、大介さんは成長した俺の姿に興味津々で。言いかけたものの、じっと見つめられて思わず視線を逸らしてしまった。

俺としたことが、何て失態だろう。

「どないしはったんでっか?」
「あっ…いや、あの…」
「何やー?自分で言うんちゃうかったんか、愛斗」
「せやせやー。意気込んどったくせに」
「言いますよ。ハルさんもケイさんもちょっと黙っててください」

茶化す二人をギッと睨み付け、呼吸を整えて大介さんに視線を戻す。
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