state of LOVE
短く切り揃えられた髪に、少し太めのきりりと上がった眉。
涼しげな一重瞼の目元に、大きな口。

あの三人みたく異様に若い感じはしないけれど、老け込んでもいない。良い年齢の重ね方とした、とでも言うのだろうか。

だからこそ、余計に緊張が走った。

「マナ、セナから話しましょうか?」
「いいから黙ってろ」
「はい」

いつものようにピシャリと撥ね退けてから思う。これはさすがにマズかったのではないだろうか、と。

けれど、そんな俺の態度に大介さんの表情が変わることはなく、寧ろ優しげな笑顔が怖かった。いや、失礼な話だけれど。

「あの、僕…聖奈さんと、結婚を前提にお付き合いさせていただいてます」
「…結婚?ハルさん?」
「え?いや、まぁ…俺がええ言うたんですわ」
「結婚て!まだ学生とちゃうんかい!」
「はい。まだ学生です」
「せやったらあかん!ちゃんと社会人になってからや!」
「はい。それは勿論そのつもりです」

やっと仲間が見つかった!と、こんな状況ながら、俺の考えに賛成してくれるだろう人物の登場に、思わず喜んだ。

「結婚は、卒業して就職してからします」
「でも一緒に住んでるんだよね?」
「ちょっ!メーシー!事を荒立てんなって!順序良く!」
「えー?でも、ちゃんと言っておかないと。俺、愛斗の父親だし」

いつもながらに何かを含む「ふふっ」という笑い声に、ハルさんの「絶対面白がってるやろ!」という苦々しい言葉が撥ね退けられる。

さすが悪魔。
相手が誰だろうが関係ないのか。

と、まるで他人事のようにそのやり取りを見つめていた。

「一緒に…まさかっ!ハルさんっ!」
「あー…まぁ、そうゆうことです。多分。見てないですけど」
「そりゃえらいこっちゃ!聖奈!ちょっとそこに座れ!」
「…はい」

ハルさんから聖奈へと矛先を変え、大介さんはどうやらお怒りモードで。俺が殴られるという話はいったいどこへ行ったんだろう…?だなどと、美緒を受け取りながら、怒られるはずの人物である俺はどこまでも傍観者だった。

「おにーさまはお前に何て言うたんや」
「はい。結婚まではしっかりと貞操を守るように、と」
「せやな。その言いつけをお前は守らんかったんやな」
「はい」
「ごめんなさいは?」
「しません。セナは悪いことをしたとは思ってません」
「何やとっ!」

グッと拳を握り締めた大介さんに、聖奈の溺愛者筆頭のケイさんの手が伸びる。けれど、それはハルさんの手によってやんわりと制された。

「セナはマナと結婚します」
「そうゆう問題とちゃう!順序が違う言うとるんや!」
「それが悪いことだとは思いません。はるははる、マナはマナです」
「減らず口叩きよって!」

ヤバい。

そう思った時には、もう体が動いていた。
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