最低最悪男子はあたしです




そして階段を下り切った時には既に槐はあたしの隣にいた


そしてあたしの肩を掴み、肩で息をしながら


「紫音って案外酷いよなー」



とチラリとこっちを見ながら嫌みっぽく言ってきた



「ありがとう」


とさっきした会話と似ていると思いながら返すと、やっぱり槐は“やっぱうぜぇ”と小さく呟いているのが聞こえた


だけど、その声のどこかに嬉しそうな雰囲気が漂ってくるからか、楽しいとも思ってしまう



靴を履き替えて校舎から出ようとすれば…



「紫音くん!」


っと女に声を掛けられた


そしてそれからとなりにいる槐を見て顔を赤らめる


あれだな、“あっ!こっちもカッコイイじゃねーか”的な心情だろう


あたしに告白ー?と思いつつもその子に視線を向けていれば、その女はあたしの視線に気がついたのか、もう一度コッチを向いて顔を赤らめて俯きだした



「紫音くん、ちょっとだけ良いかなぁ?」


“ちょっとだけ良いかな”なんて聞きながら、その顔はランランと輝いていて、“良いでしょ、だって私が来たんだからダメなわけないわよねぇ!”と顔に書いてある


どこからそんな自信が湧いて出てくるのだろうか


そういえば、と思いチラリと視線を槐にやると、またあの笑い方になっていた



―――――愛想笑い



あたしと同じだな、と思いつつ槐と視線を合わせる


…が槐は女のいるこっちを全く見ようとはしない…



だから



「明日でもいい?」


と女に聞く



自信過剰な女は顔を“は?”とでもいいたげな表情に変えてから、すぐににこやかな表情を浮かべた


だけど、“は?”と言いたげな顔は一瞬だったとしても、普通に気がつくぐらいあからさまに歪めたため…



もうにこやかに笑ったところで、さっきのあの顔は隠し切れていない



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