secret
それは……あり得ない話ではない。
父親が執事なのだから、その後を追う可能性も十分ある。
ただ、それが何を意味しているかが、問題だった。
「つまり……」
「イギリスのスクールへ通い、本格的に勉強をして来ようかと」
「……いつ」
「来年です」
来年、かぁ……。
そう考えて、彼の言った『否定』が分かった。
確かに。
「わたしをひとりにする気?」
「ひとりにしない為に、行くのです」
「信じらんない」
「冗談ではないと、先に言いました」
「信じたくない」
まるで、駄々をこねる子供のようだ。
10年間もずっと一緒だった。
それならこの先もずっと一緒に居られるはずじゃない。
「そう長い期間ではありません」
「……なんで言わなかったの」
そして彼はふっと困ったように微笑んで言うのだ。