さよなら、ありがとう。
ーコンコンー
『失礼しまーす。』

保健室に入るとあたしの唯一大好きな体育の先生がいた。
50代くらいの男の先生でみんなからの人気のある
気さくで優しい先生。

『優衣じゃねぇかぁ。どうした?どっか悪いのか?』

私を見るなり声をかけてくれる。

『うん、実は現国の授業を受けてはいけない病なんだよね…』

『真面目な顔して何言ってんだ…?』

心底呆れた顔をしてため息ついている。
あたしソファーに座って保健室利用者名簿に名前と嘘の体温を記入する。

『優衣、最近どうなんか?』

『んー?何が?』

『たまぁに授業に出てきたと思ったら、なぁんか遠く見つめて考え事して。
友達に話しかけられたら無理に笑うだろ?
なんかあったか?』

『そんなことないよー。あたし多分いっつもボーッとしてるんだよねー。』

先生があまりに的確なこと言ってくるからアハハと笑いながらごまかす。

『優衣。無理はするな。
無理はするなだけど…笑え。
優衣は笑っとけ。お前の笑顔は良いんぞ?
なんかあったら話してくれんでもいいから
俺んとこに遊びに来い。いくらでも笑わせてやるぞー。』

ケラケラ笑いながら先生は言ってくれるけど
自分のことを見ててくれたことが嬉しくて
私は下を向いて涙を落とした。

でも、次の瞬間には顔をあげ
『大丈夫だって♪』
と、きっと下手くそであろう笑顔を向けた。

『はいはい。あんまりサボるなよー。』
そう言いながら出ていこうす先生に
『先生もね』
と言うと、俺はサボりじゃねぇっとか言いながら出ていった。


『先生、ありがとう』

小さい声で呟き、奥のベッドに寝転びカーテンを閉めた。

本当に笑ったのって
いつが最後だったかな…

そう考えてる間に夢の中に落ちていった。

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