太陽に届く場所
 「彰、一緒に帰ろ」
 帰る準備をしていたら、悠弥くんに声をかけられた。
 「うん、いいよ。僕も今誘おうと思ってたところだし」
 悠弥くんが嬉しそうな顔をする。
 「彰の方から一緒に帰ろって誘ってくれたこと最近ないから何か嬉しい」
 「喜んでもらえたなら良かった。さ、行こっか」
 鞄を肩に掛けて、悠弥くんと部室を出た。
 部長に言われたことが気になって、然り気無く話題を振ろうと思ってたけど、何故か気まずいような感じがして上手く話せない。
 う~ん……あ、そうだ。何処かでゆっくり話せば、話しにくいことも話せるかも。悠弥くん家にお邪魔することができるか聞いてみよう。
 「ね、悠弥くん。今日悠弥くん家行ってもいいかな」
 「いいよ。彰なら何時でも大歓迎だから」
 あっさりOKもらってしまった。
 「(悠弥くんの、僕に対する気持ち。ちゃんと聞かなくちゃ……たとえ、それを受け止めることが出来そうになくても)」
 僕は覚悟を決めた。


 お茶を淹れてくるって悠弥くんが部屋を出たので、悠弥くんの部屋のベッドに腰掛ける僕はひとりになった。
 悠弥くんの家に来るのは久しぶりだ。
 家が隣同士で親たちも付き合いがあるから、小学生位まではよくお互いの家に往き来していたけど、中学生になると部活や塾で忙しくなって、一緒に帰ることさえ少なくなったからなぁ。
 「紅茶淹れてきたよ。彰が好きなやつ」
 黄緑のギンガムチェックのエプロンを着けた悠弥くんが、お盆にティーセットとビスケットを載せて現れた。
 「ありがと。悠弥くんが淹れてくれる紅茶、とっても美味しいから好きだよ」
 言いながら、ティーカップとソーサーを受け取る。
 「どういいたしまして。で、彰。俺に聞きたいことって何?」
 僕は思わず紅茶を噴き出した。
 「まだ何も言ってないのになんで聞きたいことがあるってわかったの?」
 悠弥くんがにやっと笑う。
 「ずっと彰のこと見てれば、彰が何考えてんのかくらいわかるって」
 「僕は悠弥くんの考えてること、ちっともわからないよ?」
 「彰は鈍いからだよ」
 「えぇ~」
 ベッド脇のサイドテーブルにティーカップを置いて、悠弥くんが僕の頭をくしゃくしゃ撫でた。
 「彰が俺に聞きたいことも、当ててみせよっか?」


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